日本には「首根っこを押さえる」という慣用句があります。
実際に人間の首根っこを押さえる人はまずいませんが、この慣用句には急所を掴むことで動きを取れなくするという意味があります。
そして面白いことに首を押さえられると動けなくなるのは猫も同じです。
猫を抱くときにたまに首根っこを後ろから掴んでいる人がいますが、不思議なことに首根っこを掴まれた猫はおとなしくなります。
どうして猫は首を後ろから掴まれると大人しくなるのでしょうか?
その理由について解説します。

首の後ろを掴まれると、ぬいぐるみみたいに動かなくなってしまう猫ちゃん‥。
その理由に迫っっちゃうニャ!
首の後ろを掴むのは母猫が子猫を運ぶときに行う動作
動物の子育てをそばで目撃したことのある方ならお気づきだと思います。
テレビの動物番組でもたまに登場するシーンです。
猫を含めた動物は子どもを運ぶときに首筋を後ろから咥えるようにしています。
これは手で運ぶことが出来ない動物にとって、自分の子どもを移動させる手段は口で咥える以外にないからです。
また首の後ろが最も咥えやすく子どもがおとなしくなるため、安全かつスムーズに移動させられるという利点があります。
この光景は猫の子育てでもよく見かけます。
子猫は体重が軽いため、母猫がヒョイっと首を後ろから口で固定することで簡単に移動させることができます。
とはいえ大きくなると首を咥えられた猫は暴れますし、バランスを取るのが難しくなるため移動に時間がかかるようになります。
この方法が使えるのは子猫が小さなうちだけです。

猫ちゃんだけに限らず、手が使えない動物は抱っこの代わりの手段として首の後ろをくわえるニャ!
なぜ猫は首を掴まれると大人しくなるの?
では、なぜ猫は首を後ろから掴まれると大人しくなるのでしょうか?
実はその理由を検証する実験が行われています。
検証実験1
2013年に報告された研究では、この現象は「母親が子どもを移動させるために重要な意味がある」と結論づけました。
この研究ではマウスを使って実験しています。
心拍数と鳴き声をモニターできる特殊な装置を子どものマウスに取り付けて、母親マウスが子どもを移動させなければいけない状況を作りました。
その結果、子どもマウスは首筋を掴まれることで動きがおとなしくなり、鳴き声が少なくなり、心拍数が低下するといった「鎮静反応」が見られることが確認されました。
検証実験2
さらに2007年には猫を使った実験でも検証されています。
実験では31匹の成猫を対象に首筋に幅5~6cmのクリップを取り付けて、おとなしくなるかどうかを調べました。
子猫ではなく成猫で実験したところがこの研究のポイントです。
その結果はというと、ほぼ100%に近い30匹の猫で
- 受け身になる
- 背中が沿って丸くなる
- しっぽを後足の間に挟む
というような、子猫が母猫に首を咥えられたときに見せるのと同じような反応が確認されました。
さらに瞳孔が拡張して、心拍数が早くなり呼吸が荒くなるといった変化も見られました。
また喧嘩などで噛みつかれたときに見せる「恐怖反応」ではないことも確認されました。
つまり首を掴まれたことで自分の意思で従順になったということになります。
このような結果から研究者たちは、多少は個体差があるものの、首を掴むことで「猫に苦痛を与えることなく動きを抑制できる」と結論付けました。

研究結果を見ると、首筋を掴んでおとなしくなるのは猫だけに見られる反応じゃなくて、多くの動物でも同じ反応を見せることが推定できるニャ!
抱き上げるときに首の後ろを掴むのはNG!
いくら猫の動きを抑えられるからといって、抱き上げるときに首を掴んで持ち上げる行為は、猫の体に負担をかけるためやめましょう。
母猫が行うのと人間が行うのとでは訳が違います。
持ち上げる高さも大きく異なり、落下による事故の危険があります。
そもそも抱き上げるという行為は愛情を伝えるためのスキンシップですから、動きを抑え込むような抱き方は本来の目的に合っていません。
猫を抱き上げるときは片手で前足の付け根から持ち上げて、もう片方の手をお尻のあたりに入れて下半身を固定します。
姿勢が安定しないと猫が嫌がって暴れてしまいます。
首の後ろを掴むのが有効な場合もある
では、母猫が行うような首を固定する方法は全く使い道がないのでしょうか?
そんなことはありません。
抱き上げるときに首を掴むのはいけませんが、どうしても必要なときにおとなしくさせる手段としては有効です。
例えば暴れている猫を制止するとき、動物病院に連れて行く、災害が起きて避難が必要な緊急時などに活用することができます。
首を掴むという方法を人間が行う場合は、慣れないと母猫が子猫を移動させるように上手くできません。
あまり多用してはいけませんが、いざというときに練習しておくのも良いかもしれません。

普段の抱っこでは、愛情を込めて両手で優しく包んであげてね!
まとめ
首の後ろを掴まれると、猫は自らの意志で従順になるとは‥。
検証実験の結果はとても興味深い内容ですね。
とはいえ、むやみに猫の首の後ろを掴むのは控えましょう。
愛情を持って両手で丁寧に抱っこしてあげないと、愛猫に嫌われちゃいますよ?(笑)

わんにゃんラボ編集部

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